ごきげんよう。MINDHACK開発チームのサブシナリオ・広報担当スタッフ、ササン三です。
もうすぐ春ですね。こう暖かいと、お祭り騒ぎがしたくなってきますね。気分はもうスプリング・フェスティバル。Spring Festival。S……F……
SFが観たい読みた~~~~~~~~~い!!
先日アップデートされたMINDHACK第5章は宇宙飛行士が主役の、とびきりSFなお話でした。作中でもいくつかの作品へのオマージュがあり、本作をきっかけにSFに興味をもった方もいるのではないでしょうか(いるよね)?
そんな皆さんのために、今回は特別編としてMINDHACK開発スタッフがおすすめの入門用SF小説&SF映画を紹介します! 登壇するのは開発チームきっての本の虫・紅狐と映画の虫・ホでヴ。今回の記事をきっかけに、ぜひお気に入りの作品を見つけてみてくださいね。それではいってみましょう!
おすすめのSF作品~小説編~
紅狐です。MINDHACK開発チームではシナリオ・プログラムを担当しています。『はじめてSFを読むかたへのオススメ小説』ということで、今回は『短い・手に取りやすい・読みやすい』をテーマに3冊を選びました。
私は短編集が大好きなので、選んだ本も3冊中2冊が短編集、つまり短いお話のたくさん詰まったお得で読みやすい本になっております。
本当に超はじめてのかたには『もうなんでもいいから星新一の短編集を読んでくれ!! とにかく全部面白いから!!』……と叫びたいのですが、「読んだことあるよ〜」「そこから一歩ちょっと踏み出す!」的なかたに向けてということで、本日のラインナップはこちらです。
伊坂幸太郎 『楽園の楽園』
https://www.chuko.co.jp/special/rakuennorakuen/
伊坂幸太郎氏といえば『死神の精度』を筆頭に、冴えてるユーモア・イケてるアクション・おしゃれな設定……と全部の要素で面白いこと間違いなしの小説家。こちらはそんな伊坂氏の作家活動25周年記念として出版された短編作品です。
全世界で突然同時多発的に発生したさまざまな災害。大規模停電は起きるわ、ウイルスは蔓延するわ、飛行機は墜落しまくるわ……
そして実は、その全てが人工知能『天軸』のしわざらしい!
正体不明の『天軸』は、本体がどこにあるのかもわからない。しかし、手がかりがひとつだけあった。それは『天軸』を開発した人物が残した一枚の絵で、美しい楽園を描いたものだった。
『天軸』を探すために選ばれた3人の若者たちは、その絵に描かれた楽園を見つけ出すため、世界を救う旅に出る……
というあらすじのお話。
帯に書いてあるキャッチコピーがすごくいいんだ。
『人はどんなものにも物語があると思い込む。きっとあなたもそのひとり』
実はこの本、SFだとは書いてないんだけど、SFとはサイエンス・フィクションのことであり、時にスペキュレイティヴ・フィクション(思弁小説)のことでもある。
現実の延長、少しだけルールの異なった世界で『もしこうだったら?』という問いかけを与えられることこそがSFの醍醐味。(だと私は勝手に思っている!)
そしてこの『楽園の楽園』はまさにスペキュレイティヴ・フィクションの入り口にぴったりな、美しく読みやすい爽やかな本だと思います。
挿絵も豊富で、かわいくも抽象的で不思議なアートが作品の雰囲気にぴったり。フルカラーで絵本のような美しさ。装丁も黒地にメタリックな緑が冴える、とても素敵なデザインです。
2025年3月現在、めちゃめちゃ最近出た本なのでお近くの書店でもお求めやすい。やったね!
万華鏡 (ブラッドベリ自選傑作集)
https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488612061
紅狐のモットーとして『つらく・しんどく・美しい話』が書きたい!という願いがあるのですが……その根本にあるのが幼少期からひたすら読みまくったレイ・ブラッドベリの作品群です。
この短編集はタイトルにもある通り、作家自身が選んだ「これぞ!」という作品が26編も詰まった文庫本。個人的にブラッドベリの『火星年代記』に深い思い入れがある……というのをだいぶ前に書いたのですが、なんと『火星年代記』からも数編収録されており、私の一番好きな話『やさしく雨ぞ降りしきる』も入っている!!
レイ・ブラッドベリという人はものすごくたくさんのお話を書いた人で、膨大な数の短編集が出ているしそれぞれバラバラにいろんな作品が良いので、つまりこの本は初ブラッドベリにとびっきりピッタリでサイコーなんです。音楽でいうグレイテストヒッツ! みたいなやつです。
MINDHACK第5章のメインキャラクター・ヒューゴのセリフを書く時、私はこの本の表題作『万華鏡』のことをなんとなく思い浮かべていました。
『万華鏡』はこんなお話。
不慮の事故により宇宙船が壊れ、搭乗していた宇宙飛行士たちは暗黒空間に投げ出されてしまった
やがて訪れる死を待つ中、彼らはそれぞれに人生を思い返しながら通信を繋ぐが、ひとり、またひとりと声が届かなくなっていく。最後のひとりが消えゆく寸前に望んだこととは……
ごくごく僅かなページ数だけれど読んだ後いつまでも心に残る、つらく、しんどく、美しい短編です。
この本にはブラッドベリの代名詞とも言える名作『霧笛』も収録されていて、こちらも読後に余韻を残す素晴らしい作品です。本当に勧めたいブラッドベリの短編がだいたい全部入ってる、パーフェクトな傑作集だと思います。
人間の手がまだ触れない
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784150115975
冒頭で挙げた星新一にも影響を与えたと言われている短編SF小説の名手、ロバート・シェクリイの短編集。
シェクリイといえば『ショートショートの祖』くらいに思っていただければ多分大丈夫です。ショートショート(≒星新一)と言われてほとんどの人が思い浮かべる雰囲気は『短くて、ヘンテコで、なんだか少し皮肉っぽくて、オチが面白い』……みたいな印象だと思います。こちらの短編集は、その「ヘンテコで、皮肉っぽくて、オチが面白い」味が好きなかたにピッタリな本です。
これも短編集なのですが、表題作『人間の手がまだ触れない』のあらすじはちょっとゲームっぽい。
食べ物がなくなって飢えた末、未知の惑星に不時着した二人の男。そこで異星の知的生物が作ったであろう倉庫を見つける。この中にはおそらく食料もあるはずだ。倉庫に置いてあるのは何に使うのか見当もつかない荷物ばかりだが、説明書きのラベルが貼ってある。しかし異星人のラベルだから、字が読めない! どうにかこれを解読してこの中から食べられるものを探さなきゃいけないぞ! というお話です。
とにかく全部面白いしシニカルさとユーモアにあふれているんだ、シェクリイの短編は。収録作の中で私が一番好きな話は『専門家』という作品。これは「人間ってどうしてこうなんだろう」という疑問に答えを出してくれるような、どこか明るい気持ちになれるお話でした。
そしてすみません、この本「新装版出てるし買いやすいだろ! ぜひ!」と思っていたのですが、今現在絶版になってました……
(そう、実はSF小説・特に海外作家の作品を読む時の最大のハードルは「これ読みたいけど絶版でもう売ってねえ」「電子書籍版も出てねえ」「もう図書館で探すしかねえ」ということなのです……!)
でも比較的大きな本屋さんでは、たまに売ってます。ぜひハヤカワ文庫の棚を探してみてください!
おすすめのSF作品~映画編~
こんにちは!ホでヴです。MINDHACK開発チームではアート担当です。
今日はSF映画を初めて見る方におすすめの作品を3つ紹介したいと思います!
選んだ基準は『何してるのか分かり易い・宇宙関連』です。
紹介!いってみよう!!
『月に囚われた男』 2009年
イギリスのSFスリラー映画。登場人物は1人?と1台。
お月さまで働いている男性「サム・ベル」と、ニコニコマーク人工知能「ガーティ」が出てきます。基本この2人しか出てこないので、登場人物の顔が覚えられない……!で迷う事は無いと思います。
あらすじ
月面基地で地球へ送るエネルギーを採掘する宇宙飛行士サム・ベル。
彼は1人で孤独に仕事をこなしていたが、月面で過ごす期間は終わりを告げようとしており、数週間後には地球に帰って妻のテスと3歳の娘イヴと再会することになっている。
ところが!彼は月面探査車を運転している最中に致命傷に近い事故を起こしてしまう……
いろいろあって基地へ帰ったサムなのだが、そこにはなんと、自分がもう1人いるじゃないか!?!?
同じ人間が2人いる!?何故?どうして?どういう事!?
という内容。何故同じ人間が2人もいるのか?本物はどっち?というか、もしかしてサムは頭が変になっちゃった?これは妄想?といった謎に目的を絞った内容になります。
役者さんは1人。演技力も素晴らしく、シンプルながら内容も非常に深いものとなっております。
ちなみに自分は断然「字幕」派です!吹き替えも悪くないけど、大事なシーンでちょっと台詞が面白くて笑っちゃったので字幕が良いと思います。
SF入口としては、良い映画なんじゃないかなあと思ってます。宇宙だし、人工知能も出るし。
ガーティ、めちゃくちゃ可愛いです。予告リンク付けといたから!見て!!
SF映画の良いとこはめちゃめちゃ可愛い機械たちが出てくるとこだよね。
私はそれ目当てでSFにどっぷりになりました。宇宙じゃない映画でもめちゃ良いのが出てくるのいっぱいあって……長くなるから別の機会に。
『ゼロ・グラビティ』 2013年
事故だ!!死ぬ!!!生きて地球に帰れ!!!
周りは全部死と静の環境。地球が目の前に見えているのに、そこへたどり着く道はなんと遠い事か……
あらすじ
スペースシャトル「エクスプローラー号」にて宇宙望遠鏡の修理作業を行うライアンとシャリフ。彼らの傍らで新型の船外活動ユニットのテストを行っていたマットに、ヒューストンの管制から、膨大な量の宇宙ゴミが高速で接近しているため船内に避難するよう緊急連絡が来る。ライアンらは作業を中断して退避しようとするが間に合わず、「エクスプローラー号」の主翼に宇宙ゴミが衝突する。シャリフは顔面に宇宙ゴミが直撃して即死し、ライアンとマットは2人とも宇宙空間に投げ出されてしまう……
宇宙服の酸素がどんどん減っていく中、彼らは無事に生きて帰る事ができるだろうか?
という内容。
公開当時は冒頭の脅威の1カットで話題になりました。映画って、カメラがよく切り替わるでしょ?お話してるAさんの顔を映して、次はお返事するBさんの顔を映すよ。みたいな。それが一切ないの。ずっと同じカメラで撮影してるの。実はこれめちゃくちゃ凄くて、なんでかって言うと失敗したら全部最初からやり直しだから……
普通はぶつ切りのカットを沢山繋げて作るんだけど、冒頭ではそれをしてなくて、とにかく技術がヤバい!!すごすぎ!!!!
最初の方は少しグロい映像とか、宇宙に放り出されてぐるぐる回ってしまうのを止められないとことかが一人称視点で描かれたりとかしてちょっと怖いかもしれません。
でも、そこを通り過ぎたら怖いシーンやジャンプスケアは無いので安心してください!ドキドキはずっとするけど……
ぐるぐる回ってしまうのを止められないのは、宇宙には摩擦が無いので、自然に止まる事がなく永遠に回り続けてしまうからです。
宇宙ゴミが怖いのも、爆発とかした勢いそのままでこっちに突っ込んでくるから、でかい弾丸がぶつかってくる感じになっちゃうからです。
地球だったら空気で摩擦されてだんだんスピードが下がるのだけど、宇宙ではそれが無いんですね。
空気って意外と重くてぶ厚いんだなあと言うのを認識できるのが面白いです。
目の前に地球が見えているし、国際宇宙ステーション(ISS)なら分かり易いかな?と思って選びました。
目的もハッキリしていて、生きて帰る。それだけ。
でも生きて帰る事が一番難しい……
自分はこの映画の一つ一つの丁寧な演出と、人間の人生の描き方が大好きです。
『メッセージ』 2016年
地球に謎の宇宙船が降りてきた……
言語学者のルイーズ・バンクと物理学者のイアン・ドネリーは、中にいる2体の地球外生命体「ヘプタポッド」と交信して、飛来の目的を探るため、彼らの文字言語の解読をはじめる。
といった内容。
宇宙の外から来た生命体とのコミュニケーションを「言語解読」というリアリティで描く様がワクワクします。
言葉っていいなあ、文字って、素晴らしいなあとしみじみ思わせてくれた作品です。
そこ以外にも盛り上がりは沢山あるんですが、私はこの1点が気に入りました。
言語さえあれば宇宙人とも意思疎通ができるようになるという、あたたかい夢が大好きです。
これも分かり易いじゃろう。と思ってたんですが紅狐に「いや、結構難しいのでは?」と言われて、確かにちょっと目的がごちゃごちゃするかもな……爆発もするし……なんか未来視えるし……と思いました。
でも~宇宙人が良くてえ……宇宙人と文字でやり取りするさまが最高でえ……あと文字の形が超良くってえ……
なので、上2つの映画を見て自信がついたら見ても良いかも?
ちなみに公開当時は宇宙船の形が日本のお菓子の「ばかうけ」に似てるってので話題になってました。
内容はかなり真面目で、ばかうけと思って見るとばかうけじゃないじゃん!!って思ってしまうかも……
そこだけ注意して見てください。
ここでボーナスステージ!!分かり易いとか総無視して自分の大好きな映画をおすすめしようのコーナーです!
『銀河ヒッチハイク・ガイド』 2005年
1978年にダグラス・アダムスが脚本を書いたラジオドラマが元。小説版もあるよ!
小説はシリーズで全6作。全部最高。一番最後のはちょっとだけ空気違うけど……
ダグラスは映画化をずっと望んでたんだけど、映画版脚本を書き終えたら映像化を待たずして亡くなっちゃった……
そんなこんなで出来上がった映画は本当に!最高に!!素晴らしい素晴らしい出来!!!!!!!!!!!ダグラスに見て欲しかった……!!!!本当に!!!!!
鬱病のロボット「マーヴィン」とクソ陽気なおしゃべり人工知能「エディ」も出てくるよ!この2体はマジで最高。この2体の為だけでも良いから見て欲しい。
あらすじ
ある日、地球に宇宙船団が飛来し、「銀河ハイウェイ建設工事の立ち退き期限が過ぎたので、工事を開始する」と言って、冒頭5分で地球爆発。
たまたま生き残った地球人アーサーは、仲間たちと共に宇宙を放浪する。
とか、あらすじにするとこんな感じなんですけど、イギリスジョークがバチバチに効いててとにかく全部面白い。
人間は自分のこと地球上の生命体で一番賢いと思ってるけど、実は3番目で、2番目はイルカ。とか。
地球を爆破する事はアルファ・ケンタウリにある出張所の地下とかにある暗い掲示板の端っこに地球年で50年前から掲示されてたから、それを知らない地球人が悪いとか。
ある宇宙人が「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」を計算するためにスーパーコンピューターを作ったんだけど、750万年かかって導き出した答えが「42」で、42って何????ってなることとか。
タオルケットは必要なこととか。
やりたい事する為に宇宙市役所でクソほど待たされたりとか。
僕ソファみたい。とか。
とにかく宇宙を旅するには「Don’t Panic !」宇宙銀河ヒッチハイク・ガイドがあれば大丈夫!
私がこの映画で好きなのが、このはちゃめちゃなお話をしっかり映像化してあることもそうなんですけど、冒頭の「So long and thanks for all the fish」(さようなら。いままで魚をありがとう)という音楽が最高なところです。
これはイルカが人間に対して歌った曲、というていで、今まで「地球が壊されちゃうよ」って輪くぐりやジャンプで伝えてきたけど、人間は誰も気が付かなかったね。でも人間のくれる魚は最高だった!今までありがとう。私たち、何か一つ変えられるなら歌を習っていたでしょう。そうすればもっと私たち、分かりあえたかもしれないね。
という内容です。
歌があれば、全く違う種族でも、もっと分かりあえたのかも?という夢物語が切なくて、どうしようもなくて、美しくて、大好きです。
私はこの作品にめちゃくちゃ影響を受けていると言いますか、考え方がかなり近いので、個人的にとても心地いい作品です。
超!おすすめ!ですが、何人かに見て貰ったら「シュール」「よく分からない」と言われてあんまりいい反応じゃなかったので、この映画って難しいのかもしれません。
でも最高なんで!マーヴィンとエディの為だけでも良いので見て欲しい!彼らは本当に最高なので。
(※ササンの横やり…映画慣れしていない自分でも、原作版小説を読んでから映画を観るとかなり理解できました! かなり笑えて最後はじーんとくるので、小説読んで、映画観よう!)
こんなところでしょうか……!
超代表格の『2001年宇宙の旅』とか!『インターステラー』とか!有名だしめっちゃ好きなんだけど!!今回は「分かり易さ」で選んだので、省きました。
『インターステラー』はだいぶ分かり易いけど、最後の方がちょっと難しいかな~とか、時間の進み方が違うっていうのが玄人向けかなあ~と……
でもTARSとCASEっていう最強かっこいいロボが出てくるのが本当に最高だし、いろんな惑星に行くし、お話も面白いし、意外とギャグっぽい部分も多いので是非見て欲しいです!!
『2001年宇宙の旅』は最高最強完全無欠わが人生の人工知能である「HAL9000」が出てくるんですけど、だいぶ上級者向けの映画だと思うので、無理しないでください。でもすっごくすっごく良い映画なんだよな~~あまりに当たり前過ぎてわざわざ言うのもおこがましいけど、とにかく映像が素晴らしいっっっ!!!!!!!!!
大大大好きな映画の一つです。でも無理して見る映画ではないと思います……!!
以上!おすすめ映画SFでした~!
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いかがでしたか? ひとくちにSFといっても、個性豊かな作品がよりどりみどりでしたね。紹介された作品を触れたあとに改めてMINDHACKを遊んでいただくと、「この描写は、あれが好きだからこうなってるのね!」と合点がいくかもしれません。みなさまもぜひ、よいSFライフを。それでは!