※これはMINDHACK本編と全く何の関係もないB級映画です。
ギャングのキング・ブラックサンシャインは、ひとり訪れたショッピングモールで何故かゾンビ大惨事に巻き込まれていた!
謎の家具屋店員・ヤマムラ(自称イーヴリッグ)や、謎の簡単造形殺戮ロボ・シノ、謎の博士ロボ・COM_Zと共に外界への脱出を目指すブラックサンシャイン。
果たして無事にショッピングモールの屋上へたどり着き、ヘリに乗ることができるのか?
ショッピングモールの屋上を目指し、輝く明日に向かって走り出した一同!
「ア”ーーー」
「いたーーーーい!!」
しかし、COM_Zがゾンビに噛まれた! 走り出してわずか5分後のことであった!
「ああ、しまったのだ……! このままではワガハイもゾンビになってしまう! ワガハイのことはいいので、みんな、先に行くのだ……!」
「博士ーッ!!」
「シノちゃん……元気でね……」
「いや、あんたロボットだろ? ロボットなのにゾンビ感染すんの?」
純粋な知的好奇心から尋ねるブラックサンシャイン!
「フン、博士。貴様を壊すのはこの我だ。醜い死に損ない共に奪われるのは癪に障る。ここで足掻け。……我は残るぞ」
「し、シノちゃん……!」
「なあ、ロボットなのに感染すんの?」
「……キミたち……! ワレワレには構わず、先に行くのだ! 屋上でヘリが待っている!」
COM_Zは床に力なく伏せたまま、屋上への道を指す! 背後では迫る無数のゾンビをシノロボが切り裂き退けている!!
「走れ、ウニくん! 走れ、キャビネットくん!!」
「なあ、ロボットなのに……」
「いいから早く行くのだーッ!!!!」
後ろの惨劇を振り返ることもなく、ブラックサンシャインとヤマムラは走った!
そしてついに、二人は屋上へ続く階段に辿り着いた……
しかし……!
「クソッ……あれは……!」
狭い階段の踊り場には、一体のゾンビが待ち構えていた。
薄暗い階段の闇にぬらりと立つ顔の影には得体の知れない光が輝き、ここは何人たりとも通さない、という威圧感に満ちている。しかも、何故か重装アーマーとアームシールドでガチガチに装備を固めているのだ!
「ア”ー センセイー」
「すげェ圧だ……!! 屋上まであと一歩だってのに!!」
まるで最後の障壁のように立ちはだかり、戦闘の構えを見せる威圧感ゾンビ! 生前の習慣なのか、何か呪詛のような言葉を抑揚なく呟いている!
「センセイー ハヤクサキニイクンダー センセイー」
「なんかブツブツ言ってて怖い!!」
「これはどうやら誰か大事な人を先に行かせてここに留まった奴の成れの果てらしいというドラマを感じるぜ……!」
わざとらしい説明とともに、拳に軍手をはめる!
「仕方ねえ、正面突破だ!! 殴り合いでブラックサンシャイン様に勝てると思うなよ!」
そしてはめた軍手をすぐ脱ぎパァーン!! と勢いよく床に叩きつけた! もちろんこれは中世の時代から伝わる由緒正しい決闘のサインだ!
「アッ……!」
すると、強そうな肩のすごいゾンビの様子が、乱れた……!
叩きつけられて踊り場に転がった軍手の前に、膝をついて崩れ落ちたのだ!
「セ、センセイ……」
そのまま軍手に気をとられ続けている!
「な、なんだ……なんかよくわかんねえけど、手袋に弱いらしい!」
「センセイ……」
「おいヤマムラ、今のうちに行くぞ!」
「あ、はい」
彼らは戦うことなくゾンビの脇を走りぬけ、屋上に続く扉を開けた!
「あーっ!!」
屋上へ出ると……空はもう白みかけ、夜明けが近く、風が強い!
いや、自然の風ではない。猛烈な突風はヘリコプターのホバリングによるものだ! 目の前でヘリは飛び去ろうとしている……!
「 待ってくれ!! おーい! おーい、ヘリーッ!!」
声も虚しく、ヘリの機内ではのんきに搭乗者たちが会話している。追加の生存者には気づいていない……
「いやー、とにかく先生が無事でよかったですよ! まさかこんなことになるなんてなあ」
「ほんとほんと、こんな状況でもなんとかなるなんて、さすが天才マインドハッカーですよね!」
「あ、先生と新人くんにも、施設に帰ったらお土産のチョコレートあげますね。こないだの休暇で南の島に旅行に行きまして」
「いいなあ〜! あれ先生、ところで隊長はどうなったんですか? 先生とご一緒だったと聞いてますが……」
「えっ先生、どうしたんです? さっきから何を必死に下を指さしてるんですか?」
「あれっコレエダ先輩、下見てください! 誰かいますよ! もしかして隊長じゃないですか!?」
「おーい! おーーーーい!!」
ゆっくりと高度を下げ始めたヘリに、ブラックサンシャインは必死に手を振った!!
「なあ、気付いたんじゃねえか!? 俺たち助かったぞ! なあ、ヤマム……」
その目の前で……
突然、ヘリが爆発!!
「うわああああ!!!!」
煙を上げ激しく燃え上がりながら、ヘリは斜めに墜落していく!
呆然とそれを目で追うウニ! 唯一の脱出の希望が、ショッピングモールの屋上からみるみるうちに遠ざかっていった……!
「おい、嘘だろ……」
後ろを振り向くと……
ヤマムラがロケットランチャーを構え、笑っている! 撃ったばかりの発射口からは細く煙が上がっていた!
「みんなゾンビになるんだ……ハハハ……」
ヘリの爆風で羽織の裾が煽られ、激しくたなびく!!
「ハハハハ! 実はこのゾンビたちは全部、僕が邪神LAGON(ン)に祈った願いが叶った結果なのさーっ!!」
そう叫ぶと、懐から一冊の分厚い本を取り出す! その装丁はいかにも呪われた邪神にまつわる冒涜的な装飾に覆われ、表紙には大きな『N(ン)』の文字!
「どこに持ってたんだよそれ」
「見よ! これは邪本、ラゴンノミコン!」
ヤマムラは邪本を掲げ、ウニに見せつける!
「そして、これが真実だ!!」
邪本ごとNを90度回転させると、それは……『Z』!! すなわち、ゾンビのゾではないか!! なんということだ!!
ラゴンノミコンを得意げに見せびらかしたヤマムラは、邪本を再び懐にしまい込み、改めてロケットランチャーを構える!
「邪神LAGON(ン)に身も心も捧げた私に、救いなどいらない!! 汚れた有機物は皆ゾンビになってしまえばいいんだ!!」
「ヤマムラ、てめえ……!」
「ヤマムラではない! 我が名はイーヴリッグ!!」
「イーヴリック、てめえ……!」
怒りに震え、両拳を握り締めてキャビネットを睨むブラックサンシャイン!
「黙れ!! 『ク』ではない! 『グ』だ!!」
しかし、その一つ眼のど真ん中をロケットランチャー(いつの間にか再装填した2発目)が狙う!
「さあ、次はお前だステンレスたわし! お前は私が直接神の御家に送ってやろう!! それも即日配送午前着の速達で!!」
「クソッ……!!」
絶望……! ロケットランチャーの前には手も足もトゲミサイルも出ないのか……!!
だがその時……!!
彼らの背後で屋上の扉が突如開いた!!
「何だ!?」
扉の先に現れたのは、見覚えのある姿……!
「ウ”ア”ーーッッッ!!」
躍り出たのは、腕だけになったシノロボ!
……を自分の腕の代わりに装着した、すっかりゾンビと化したCOM_Z博士だ!!
「いや、ロボットなんじゃねえの? なんでゾンビになってんだよ?」
戸惑うウニの横を目にも止まらぬ速度で駆け、ゾンビCOM_Zは獣のような四足歩行でヤマムラに突進!
「ア”ーーーーーッッッ!!!!」
「ウワーーーーッッ!! 神よーーーーーッッ!!!!」
そのままショッピングモールの屋上から、柵を薙ぎ倒し、下界へダイブ……!! COM_Zとヤマムラはあっという間に姿を消した……!!
「ハハハ……しかしこの世に邪悪な人の心がある限り、第二・第三の私が必ず現れる……LAGON(ン)神は不滅……ハハハハ…………ハハハハハハ…………!!」
落ちていったはずのヤマムラの声が、屋上とその上に広がる明け方の空にエコーを伴って、いつまでも反響した…………
邪本ラゴンノミコンの効能がぷっつりと切れたように、ショッピングモールじゅうのゾンビたちがその場に崩れ落ちる。
「…………」
夜が明ける。
屋上からは遠い山々と白んだ街のシルエットでできた地平線が見通せた。そして、眩い太陽がその姿をゆっくりと現し始めた。
鮮やかな陽射しに目を細め、腕でひさしを作り、たった一人残されたブラックサンシャインは呟いた。
「黒い太陽、か……」
逆光で影になった彼の姿はまさにブラックサンシャイン。
そう、長い夜は終わったのだ……
-THE END-
たもちゃんのためのおもちゃを買いにきた。
黒幕。一番悪い。
悪い。しかし素直ではないだけ説がある。
正体不明のキーパーソン。
演技が下手なのでゾンビ役になった。
隊長が身体を張ったおかげでヘリに乗れた。
新米隊員:隊長と先生を拾いにきた。
コレエダ隊員:旅行が好きで土産にチョコレートを配ろうとしている。
施設でみんなを待っていた。
and…..
※これはMINDHACK本編と本当に全く何の関係もないB級映画です。ありがとうございました。