―――ある日の会話ログ―――
「やあやあどうも! COM_Z博士がやってきたのだ」
「遅いぞ博士! ……何だ、此度はどんな戯言を垂れに来たのだ」
「前回はキミから、破壊衝動について教わったね? 何かを壊せば破壊衝動が理解できると。あれからワガハイ、何千回も試行を重ねたのだ」
「ほう? 貴様もとうとう手を汚したか……では、如何様だった? 何か感ずるところはあったのか?」
「聞いてた話と違って、全然何にも感じなかったのだ! 時間はかかるし、後片付けは大変だし、ただただ無益な行為だったのだ。第一、あれは誰かと一緒にやるから楽しいのであって、一人でやること自体ナンセンスだったのだよ」
「……待て、一体貴様は何を壊した?」
「一人ジェンガなのだ!」
「たわけ! 木屑の楼閣を壊して何になる? そうではない、博士よ。貴様が心から慈しむものを傷つけてみせよというのだ。愛したものが無残に引き裂かれる姿を目に焼き付けよ。 魂の切なる震えを味わってこそ、破壊の渇望が満たされるというもの」
「んん? それじゃあ、シノちゃんがこれまで破壊行為を繰り返してきたのは……みんなのことが大好きだから? てっきりキミは世の中のことが大嫌いなのかと思っていたのだが」
「我は生ある全てのものを愛でておる。命が事切れるときの、掠れた声ほど甘美なものはない! 聞く者の心を疼かせる、断末魔の愛しさよ。我は生きとし生けるもの皆の鳴き声を愛する。だからすべからく壊してやった!」
「うんうん、なるほど。それでキミはああやって人をたくさん壊してみることにしたのだね。……あっ、いいこと思いついちゃった。今度は二人でジェンガをしようではないか!」
「……ハ? 待て、一体なぜそうなる?」
「ワガハイ、一人で作ったジェンガタワーには何の価値も見出せないのだ。でも、二人の共同作業で作り上げたジェンガなら、きっと愛着もひとしおなはず! 二人ジェンガなのだ! それを破壊すれば、きっとシノちゃんの言ってることがワガハイにも分かるようになるのだ。 今度、フロッピーからでもジェンガが遊べるようなデバイスを作ってきてあげよう!」
「小癪な……そのようなまどろっこしいことをする前に、我をここから解放すればよいものを」
「それはできない約束なのだ! それじゃあシノちゃん、次回の面談をお楽しみに。まったね~!」
「おい、我は付き合うとは一言も言っていないであろう……博士、おい! その……ふざけた呼び名をやめよ……!」