MINDHACK: COM_ZとSINO3

―――ある日の会話ログ―――

「シノちゃん! シーノちゃん! ちょっと機嫌を直してほしいのだ。ほらほら、もう一回ジェンガをしよう!」

「うるさい。何百回も飽きずに塔を壊しおって。貴様に付き合うなど最初から時間の無駄であったわ」

「ああ、そうか! シノちゃんも自分でガッシャーン!! てやりかったのだね!? 気づかなくってごめん! 今度は好きなだけ壊していいからね。こっちの操作精度をスーパー向上して、もう絶対崩さないようにパワーアップしておくからっ!」

「ほざけ。我がこのような児戯で失敗すると思うか? そこで見ておれ、次もこの楼閣を崩すのは貴様だ」

「う~ん、シノちゃんのへそ曲がりはどうしたら治せるのだろうね? やはり過去の出来事が原因になっているのだろうか?」

「ハ、過去だと? 片腹痛いわ。我が生は全く満ち足りた、愛に溢れたものであった。一点の瑕疵もなかった。貴様にこうして檻へと封じられるまではな!」

「でも、現在のシノちゃんは完全にグレてしまっているではないか! 道を踏み間違えた子を放っておくのは、ワガハイの存在意義に反するのだ。キミだって今からでもやり直せるはず。そのお手伝いをしてあげようと言っているのだよ!」

「黙れ! 貴様に我の何が分かる?」

「何でも分かるよ! キミの精神は今、コードとしてこの場所に収まっているのだ。ワガハイには解析・計算・お手の物なのだよ。とはいえ、バグの原因になったソースコードの書き換えや、人格の修正はワガハイにはできないのだけれど……ああ、マインドハック装置がワガハイにも使えたら、もっとみんなを助けてあげられたのに! 残念なのだ」

「ふん。魂を都合よく書き換えられる秘術などあってなるものか」

「だーかーら、あるのだよ! マインドハックは、人々のことを確実に幸せにしてあげられる、超ゴキゲンなテクノロジーなのだ。もうちょっと現場投入が早ければ、キミも究極サイコーハッピーになって、そ〜んな不機嫌なお顔しなくて済んだのにね! ああ、シノちゃんは本当にかわいそう!」

「貴様に憐れまれるほど落ちぶれた覚えはないわ!! 大人しく聞いておれば耐え難き愚弄の数々……! 博士、これ以上は五体満足で済むと思ーー」

「あっ」

「えっ」


 

「あー! シノちゃんが壊したのだ! よかったね! 上手上手〜!」

「……」

「で、どうなのだシノちゃん? 楽しかった?」

「……我はもう眠る。しばらくここへは来るでない」