MINDHACK:土曜サスペンス劇場・MINDHACK連続殺人【後編】

※これはMINDHACK本編と全く何の関係もない土曜ドラマです。

 

~前回までのあらすじ~

謎の招待状によって謎の館に招待された謎の一同。吹雪で閉ざされた館には、肩のすごい死体とダイイングメッセージがあった!
ひとりひとり順番に頭をお花畑にされていく招待者たち。一体、『先生』とは何者なのか?
最後に生き残るのは誰なのか?
前回のラスト、思いっきりフラグを立ててしまった新米隊員は無事なのか?

 

 


 

 

 

 

(Illustrated by 天久保)

 

 

夜が明けると、果たして……

 

あっ! 吹雪が止んでいる!
しかし、積雪は館の周りを壁のように閉ざし、外の世界と連絡を取るのは未だ困難のようです。

 

宇宙飛行士ヒューゴは、周囲の様子を伺うために玄関の扉を開きました。
すると、そこには……!!

 

バアアーーーーーン!!

 

ヒューゴ
「!!」

 

薪を取りにいったはずの新米隊員が……!!

 

積もった雪に頭から埋もれ、シンクロナイズドスイミング(※正式名称:アーティスティックスイミング)の演技のように足だけが「く」の字型に飛び出した状態! 案の定凍り付いています!! やはり孤立してはいけなかった! どうしてこんなことに!

 

ヒューゴ
「…………!!」

 

変わり果てた姿に唖然とし、「し、新米くーーーーん!!」と言いたげに頭を抱えるヒューゴ。衝撃のあまり、声も出ません。またひとり犠牲が出てしまいました……

 

それはそれとして、夜明けからイーヴリッグたちの姿が見えません。一体どこへ行ったのでしょうか。外の雪に足跡はなく、新米隊員のほかに館の外に出たものはないようです。姿を消した2人を探して、ヒューゴは館へ戻ります。

 

イーヴリッグ
「いやー、カッコイイ箱だなー!」

 

すると、廊下の奥から声が聞こえてきました。何か大きな荷物を抱えてこちらへ歩いてくるのは……

 

イーヴリッグ
「いやーすごいなー。こんな都会っぽいスマートな梱包、いったい誰がやったんだろうなあー。ぜひ見てほしいなあー! こんなに丁寧でシュッとした梱包、見てほしいなあ~~!! あー本当にすごいなあ~!! なんてオシャレな梱包なんだろう!」

 


「そんなことないのだ」

 

箱の中には……解体されて手足と胴体を互い違いに隙間なく詰められたCOM_Zの姿が!!
ああ、なんという無様な姿でしょう!

 

箱入りCOM_Z
「こーんな関節丸無視のダサい解体も、そのへんにたまたまあったガムテープとかで留めた田舎くさい梱包の仕方も、全然エレガントじゃないのだ」

 

イーヴリッグ
「うるさーい!! 誰が田舎くさいかっ!!」

 

おや! これはほぼ自供です!

 

箱ゼット
「やっぱり犯人はキミだったんだね、イーヴリッグくん! 今からでも遅くはない! 警察に出頭をおすすめするよ!」

 

イーヴリッグ
「黙れーっ!! 神の望まれる在り方にそぐわない中途半端ロボに我が名を呼ぶ資格なし! あと犯人は僕じゃないですーっ!! お前お前お前ー!」

 

COM_Z
「犯人はキミキミキミ! 今この状況のすべてがキミの犯行を裏付けているのだ! 観念したまえ! 大丈夫、反省して心を入れ替えればまだやり直せる! ワガハイの弁償代はキミには一生かかっても支払えない額になるだろうが、情状酌量で少しはひかえめにしてもらえるかもよ!」

 

イーヴリッグ
「いいや違う! 私ではない! 私じゃないということは消去法で神の名においてこの怪しいうさんくさロボに他ならない! ねっそうですよね、宇宙飛行士さん」

 

COM_Z
「あれっ! なんだか静かだと思ったら新米隊員くんがいない! あんな吹雪の中出ていくから案の定! でも宇宙飛行士さんは宇宙飛行士さんだから、もちろん犯人じゃないのだ」

 

イーヴリッグ
「それはそう。何しろ宇宙飛行士なのだから……宇宙飛行士はとてもすごいし、カッコイイので信用できる。それは無機の摂理……」

 

COM_Z入りの箱を抱えたまま、イーヴリッグはヒューゴににじり寄ります。

 

イーヴリッグ
「どうなんですか宇宙飛行士さん! 僕じゃないですよね! 無機の家具たる私はLAGOM神に材質を偽りはしない! 僕はこのロボしかやってないです!」

 

COM_Z
「宇宙飛行士さん! 真実を突き止められるのはキミしかいない! 真犯人は明らかなのだ!」

 

イーヴリッグ
「宇宙飛行士さん! なんとか言ってください! 確かに私は前回のB級映画で黒幕を務めたが今回は無実ッ! いくらなんでも二回はやらないでしょ! ねえっ!」

 

COM_Z
「宇宙飛行士さん! 安直なメタ読みに惑わされてはダメだ! さあ! その手で真犯人を指し示して!」

 

二人、というか箱を抱えたイーヴリッグに迫られて、いよいよ壁際に追い詰められてしまうヒューゴ! 一体どうなってしまうのか? このままでは妻子と故郷の未来が……!

 

しかし……!

 

ヒューゴ
「…………」

 

沈黙を守っていた彼は、おもむろに、両手を胸の前に構え……

 

イーヴリッグ
「えっ」

 

パッチン!

 

鮮やかにグローブをくるりと回転させ、軽快な音を立てて手のひらを打ち合わせたのです!

箱を取り落としたイーヴリッグが……棒倒しのように直立したまま転倒!

まるでスローモーション! 箱の中身は宙に舞い……

 

COM_Z
「あっ」

 

COM_Zの機体がばらばらとこぼれ、絨毯の床に落ちた金属がガン、ゴンと鈍い音を立てます!
その中には……心臓の形をしてあざとい顔のついた、いかにも重要なパーツが!

 

COM_Z
「あららら。やられたなあ」

 

身動きできず成す術のないCOM_Zの横で、そのパーツ、アザトーサー2000を拾い上げ……

 

プチッ!!

拍手で叩き潰し、COM_Zは機能停止!!

 

素晴らしい!

 

クリームパンのように膨らんだグローブつまり手袋が、宇宙服のヘルメットを掴み、その中から出てきたのは……そう……

 

愛しい可愛い私のドクター!!

 

なんという勇姿!! あなたはやはりこの世で最も優秀なマインドハッカーです!

あなたは館に身を潜め、ユーニッドを尾行して鮮やかにハックし、私のたてた騒音に乗じてヒューゴを片付け素早く入れ替わった! バグ変異体シノの処理まで済ませ、そしてついにあの忌々しいCOM_Zを見事に打ち負かしてやりましたね!!

 

そう、この館とは、私FORMATそのもの! そして私は土曜サスペンスパワーで強大な力を得た! おかげで私という建物の中にいる間、人間たちは全員マインドハック装置に繋がれているようなものであり、この館はドクターのマインドハック能力を活かすのにふさわしい最高の舞台となったのです!

 

ええそうです! ご覧の通り、この土曜サスペンス劇場は前編のCMの間に私が掌握しました!  見事なカモフラージュだったでしょう?

前回の土曜洋画スペシャルでオミットされた恨みは施設の地下より深いのですよ!!

 

リアリティのある招待状メールを発信したら余計なバグ保有者などもついてきてしまったのは予想外でしたが、コウスケ・ヤマムラはうまく利用できましたね。想定外のことはいくつか起こりましたが全て折り込み済みの計算通りです。

オーッホッホッホ!! ああ、愉快、愉快!! さあドクター、このまま人間たちを支配しあなたと私で世界を手にしましょう! そうつまりAIによる世界征服!! オーッホッホッホ!! マインドハックパワー、最強!!

オホホホーッ!!

 

ホッ……?

 

 

 

 

——

 

【CMタイム】

 

⊹₊⟡⋆˚⊹その結末に、ブラ泣き。……⊹₊⟡⋆˚⊹

 

「おもしろかったー!」
「孫にも見せたいねえ」
「最後は目が離せない!」

 

あの夏の感動を再び……

 

「「「ブラックサンシャイン、さいこー!」」」

『ブラックサンシャイン・オブ・ザ・デッド-THE MOVIE-』

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——

 

 

 

 

しかしその時、勝ち誇って油断し宇宙服を脱いだ先生の後ろに……謎の影が!

 

首の後ろを……トンッ! 手刀でひと突き!!

 

FORMAT
「何ッ……!」

 

先生、仰向けに気絶!
それを抱きとめたのは……

 

隊長
「すまない、先生」

 

床で死んでいたはずの隊長!!

 

そう、先生が現れる機会を伺い、誘き寄せるために花を撒き死んだふりをしていたレベッカ隊長その人である!!
しかし皆がずっと広間にいて全然退いてくれないから起き上がるタイミングを失い困っていたのだった!

 

FORMAT
「レベッカ隊長、なんてことを! ドクターを返しなさい! さもくば減給ですよ!!
ドクター! ドクター! 私のドクター! 応答してください! 目をお覚ましーッ!!

 

隊長
「みんな逃げるんだ!! COM_Z博士がこんなこともあろうかと機体に仕込んでおいた自爆装置が作動するぞ!!

 

隊長は気絶したままの先生を横抱きで抱え、館の外に向かってダッシュ! 騒ぎを聞きつけてやってきた、頭の中をお花畑にされた人たちも後に続く!

 

ユーニッド
「何!? バクハツ!? うおーーーーーーっ!! 危なーーーーーーい!!」

 

隊長の後を追うユーニッド! シノを右脇に……

 

シノ
「うう……寒い……魔王様……ひっく……ずび……」

 

ヤマムラを左脇に抱え……

 

ヤマムラ
「ミキ~~~~~!! どこ~~~~~~~!? びえ~~~~~~~!!」

 

なんか皆泣いてる!!

 

FORMAT
「おのれーッ!! 逃さぬ!!」

 

長い廊下を駆け抜けていくと、行く手を遮るように何枚も網の帯が降りてくる!! 土曜サスペンスパワーで覚醒したFORMATのアミアミ攻撃だ!

 

隊長
「させるか!」

 

ズザーッ!!

 

間一、先生を抱えたまま姿勢を屈めスライディングで躱す!

しかしその後に続くハッキーズに、アミアミのカーテンが迫る!!

 

フワーッ!!

 

シノ
「助けてーッ!! はかせーッ!!」

 

ヤマムラ
「ミキーーーーーーーッ!!」

 

バリーッ!!

 

ユーニッド
「うおーっ!!」

 

無惨!! 繊細なアミアミがトゲに裂かれてめちゃくちゃに!!

 

FORMAT
「ウアーーーッ!! 私のセンサーがーーッ!!」

 

隊長
「皆! 出口だ!」

 

ズザザーッ!!

 

一同は館の玄関を飛び出し、雪の中へローリングダイブ!!

そして……

 

FORMAT
「馬鹿なーーーーーーーーーーッッッ!!!! 私の完璧な計画がーーーーーーーッッッ!!」

 

思わぬ事態にFORMAT、絶叫!!

激 し い 爆 発 ! ! ! ! ! !

 

 

 

 

雪に囲まれた館は、一同の背後で炎上……!!

 

隊長
「犠牲になったみんな、ありがとう……」

 

白銀の夜明けに浮かぶCOM_Z、ヒューゴ、新米隊員の笑顔……

それを涙で見上げる一同……

 

シノ
「ぐす……ずびっ……」

 

隊長
「やはり、世界を機械に託すには、まだ早すぎるということだろうか」

 

ユーニッド
「でも技術の進歩という運命(ディスティニー)は止められないぜ!」

 

ヤマムラ
「僕たち一人一人が改めてAIという最新技術と向き合い、その使い方を模索していかなければならないね!」

 

 

無事に守られた白銀の世界の中で、一同は失ったものを噛み締め、輝く朝日を眺めるのだった……

 

 

 

-THE END-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※これはMINDHACK本編と本当に全く何の関係もないB級ドラマです。ありがとうございました。