MINDHACK:あなたの破壊衝動はどこから?①

2021年6月に第一章の体験版を配信開始してから、早くも一年。
初めてのゲーム開発にもかかわらず、大変多くの方々に応援していただき、改めて感謝の限りです!
日頃の開発の様子をお見せする中で、登場するキャラクターたち一人一人の個性を楽しんでいただけているのが何よりもありがたく感じます。
開発チームVODKAdemo?自身も、MINDHACKという創作作品を楽しみながら制作を進めております。日々ゆっくりの進捗ではありますが、お披露目できる日を目指して少しずつ開発しておりますので、どうか今後も気長にお待ちいただければ幸いです。

いつもBlogを読んでくださる方も、初めてご覧いただいた方も、本当にありがとうございます!

 

↑この可愛い絵はササン三さん作!

 

 


 

【あなたの破壊衝動はどこから?】

MINDHACKの物語の中で重要なキーワードとなる『バグ』。人の心の中にある、利己的な理由から何かを破壊したい・何かが壊れる姿を見たいという衝動のこと。
このお話の世界では様々な要因から『あってはならないもの』『人格のエラー』とされ、マインドハック処置によって必ず取り除かれるべきものとみなされています。

ところが実際、私たちの暮らしている現実世界においても破壊衝動は存在しています。
抽象的で目に見えない、人にも説明し難い、友達との日常会話で「なんかこう、そういう事思う時ってあるよね」とふと話題に上るような曖昧なもの。MINDHACKという作品では、この衝動を具体的に描くことを試みています。

先日3週にわたってシノちゃんが『破壊衝動とは何か』を説明してくれたので、今回はVODKAdemo?メンバーが抱く破壊衝動とその根源についてご紹介いたします。

 


 

今回はわたくし紅狐です。お話全体の筋立てや、設定とかを決めています。

小さい頃からAIのキャラクターがめちゃめちゃ好きで、AIを扱った話を探して、いろいろなSF小説を読んできました。
SFとはサイエンス・フィクション、つまり現実世界の延長線上に、いかに説得力のある空想を織り交ぜるかが要。これを選り好んで読んできた経験が今の創作に活きているなあと感じています。

そもそもSF好きになったきっかけは、ある一冊の本でした。
子供の頃、実家の近所の古本屋で「なんか好きな本一冊選びなよ」「えー、じゃあこれにする」くらいの軽いノリでお母さんに買ってもらった、レイ・ブラッドベリの『火星年代記』。

この本は、人類が月に行くよりももっと前に書かれたお話です。火星には優雅で美麗な文明を持って暮らす先住民がいたが、そこへ地球からやってきた開拓者が古いものを追いやり、自分たちの新たな街に作り替えていく……という物語。

ブラッドベリはSFという方法を使って空想の情緒を描いた人で、連作の短編小説という形もあって、どこかおとぎ話のような雰囲気があります。
この本で書かれているのは人間とその文明の進歩について。
時に愚かで、時に滑稽で、時々信じられないほど勇敢で、たまに取り返しのつかないことをしでかして、でもそんな姿に何故か愛着を抱かせてしまう人たち。そしてその人たちによって失われてしまった美しい儚いもの。そういう存在のことが愛を込めて描かれています。

人が自分たちの良かれと願ったことで自ら破滅していく姿……に愛しさを覚え、
途方もない時間をかけて築き上げられてきた美しいものが、パッと瞬きをするような間に、とてつもなく些細なことで永久に失われてしまう姿……に儚い背徳の甘美を感じ、
何もかも壊れてしまって虚無だけが残ったあと、それでも人々が前に向かって進もうとする姿……に自分もこうでありたいと希望を見る。

火星年代記はそういう感性を私に与えてくれました。MINDHACKに限らず、自分の書く全てのお話がこうであったらいいなあと願っています。

特に私がこの物語の中で狂おしいほど好きなのが『優しく雨ぞ降りしきる』というお話。
朝には勝手にトーストや目玉焼きやカリカリのベーコンが食卓に並び、夜になれば家主のためにお好みの詩を唱え始める、すてきなスマートハウスのお話です。でもこのお話が始まる時点では、ここに住んでいた人間は既に姿を消しています。

人が作った理想の象徴である家は、理想の世界を実現するために、それを求めている人不在のまま全てを滞りなく進めていきます。小説を読んでる側はただただそこで起きていることを眺め、もう誰にも何の意味もなくなった完璧なシステムが勝手に動いて、そして最後には破滅していくさまを見守ることしかできない……そのラストシーンは、子供心に「美しいものが壊れるさまは特に美しい」と気づいてしまった瞬間でした。
うちのお母さんもまさか我が子がこんな魔王みたいな事言い出すとは思ってなかったと思います。

私がお話を描く際、最も大事にしたいと思っているのはこの魔王みたいな感情、「一番美しいものを壊したい」という衝動です。
決して奪われてほしくない、失ったら二度と戻らないものが失われるその瞬間こそ、その存在が輝いて見えるのではないか。
そして読み手にそう感じてもらうためには、それがそこに存在しているというリアリティと、愛してもらうためのアイデンティティが重要。そうして日々、それらを壊す瞬間のために空想の世界を積み上げています。

つまり破壊衝動こそが私の創作の源!
ジェンガの崩れる瞬間を最大級に楽しんでもらうために、今日も元気にがんばります。紅狐でした。