日: 2022年3月12日

MINDHACK:英語へのローカライズ①

【翻訳家紹介】
*Introducing the Japanese to English translator.
Here are comments in English at below part. We hope the Overseas fans also enjoy it!

MINDHACK、ローカライズしたい!!!!!!!!

実は常々思っておりました。めちゃくちゃ思っておりました。
開発チームことVODKAdemo?一同、もともと海外の作品が大好き。ゲーム、アニメ、小説など、海の向こうからはるばる言葉の壁を越えてやってきた作品に多大な影響を受けています。

2021年の6月に最初の体験版を公開したのち、興味を持ってくださった海外の方からも「ぜひローカライズしてほしい」という嬉しいリクエストが寄せられていました。
そりゃあもう、ぜひとも翻訳したい!
自分が好きな作品の生まれたところへ、逆に自分の作品をお届けできるなんてことができたらもうサイコーです。

そんな野望を抱いていたVODKAdemo?チームのもとに、ある一通のメールが。
それが今回ご紹介するフリーランス日英翻訳家・岩﨑さんからの、作品を非常に気に入ってくださったというご感想と『ぜひこの作品を英語圏にも届けたい』という申し出でした。

まずはテストとして翻訳サンプルを見せてほしい、とチーム側からお送りしたのがコレ。

ユーニッド
「あ? なんだァ?
あんたが例の『センセイ』か?」
「聞いたぜ。マインドハックだか
マダイとハゼだか知らねえが」
「ここのムショには、
人の頭ん中をお花畑にしちまう
医者がいるって……」
「なるほどな。
へっ、できるもんなら
やってみやがれってんだ」
「トゲ折り損の
くたびれ儲けに
してやらあ」

お気づきでしょうか。実はこの文章、日本語から別の言葉に翻訳するにあたって気になるポイントがあります。特筆すべきはマダイとハゼ。この日本語独特のダジャレをどう伝えるのか?
結果から言うと、このサンプルの訳がカンペキだった!!! いたく感銘を受けて、正式にお願いする運びとなりました。
(最終的にどんな訳になったのかは、ぜひ下記の岩﨑さんのコメントをご覧ください!)

岩﨑さんはこのような『言葉遊び』と、キャラクターの性格や価値観、作品の世界観などを非常に大事にしてくださっています。
MINDHACKは人間の精神や人格を扱う作品であり、キャラクターの個性には特に注意を払っています。そしてビジュアルノベルなのでテキスト自体のノリも重要。
お送りした設定資料を丁寧に読み込んだ上で「このキャラなら英語ではこう言うかも」とご提案をいただいたり、「原文ではここの『ああ……』はどのようなニュアンスですか?」とのご質問にお答えしたり。やりとりを何度も重ねたうえで、VODKAdemo?としても大満足の訳文にしていただけたと感じています!

以下、そんな岩﨑さんのプロフィールをご紹介。
さらに翻訳の際に印象に残った部分やお気に入りの点について、ご本人からいただいたコメントを二週に渡ってお届けいたします。


 

 

【プロフィール】
岩﨑 真木子
フリーランス翻訳者。専門は日本語から英語へのゲームローカライゼーション。
翻訳する際に、原文の意図を忠実かつ効果的に表現することを心がけている。 特に言葉遊びや多種多様なキャラクターの書き分けを得意とする。
Makiko Iwasaki is a freelance Japanese to English translator, with an expertise in game localization. She is passionate about portraying game experiences in a way that is both effective and true to the source language. She especially enjoys translating distinct character dialogue and wordplay.

【岩﨑さんのSNS・Webサイト】
https://makikoiwasaki.com/
https://twitter.com/iwa_m18

【MINDHACK という作品についてのコメント】
実は翻訳を任せられる前から『MINDHACK』のファンでしたので、VODKAdemo?の皆様 が魂を込めて作られたゲームに携わることができてとても光栄です。『MINDHACK』という世界をより多くの方に楽しんでもらえたら嬉しいです!
I was originally a fan of MINDHACK before joining this project, so I was (and still am) absolutely honored to work so closely with passionate developers who put their souls into creating this game. MINDHACK is a whole world to dive into, and I’m excited for everyone to see the complete version in all its glory!

 

【今回の翻訳に際して、工夫した点やお気に入りの点について】

ユーニッド
「聞いたぜ。マインドハックだか
マダイとハゼだか知らねえが」

Unid
“I’ve heard about it.
Mindhack, or minnow and haddock,
or whatever it’s called…”

「マダイとハゼ」のセリフは『MINDHACK』の中でも最初の方に翻訳したセリフなので思い出深いです。言葉遊びを翻訳することが大好きなので、このセリフを見た瞬間からワクワクが止まりませんでした。元の日本語文では「マインドハック」と「マダイとハゼ」が似ているカタカナを使用しているので、英語でも同じようにする必要がありました。考える際には二点について気を付けました:

1 “Mindhack”と同じ文字が含まれている魚介類の名前を探す
2 場所にもよりますが英語圏では日本のように色々な魚の名前が浸透しているわけではないので、なるべく一発で魚の名前だということがわかるものを探す

この二点に気を付けつつ探し当てたのが “minnow(ヒメハヤ)and haddock(コダラ)”です。幸運にも丁度良い魚名があったのであまり悩みませんでしたが、強いて言えば “minnow ’n haddock”というように“and”を省略してより“Mindhack”に寄せるかは考えました。最終的にはわかりやすさ重視で“minnow and haddock”として提出しました。

This phrase was one of the first things I translated for MINDHACK. I already knew I was in for a fun time when I saw this line, as I love translating wordplay!

The original Japanese is essentially the same, with the joke being that“マインドハック”(ma-i-n-do-ha-kku: “Mindhack”) has many similar characters to“マダイとハゼ”(ma-da-i- to-ha-ze: “red seabream and goby”).

I had two things in mind when thinking of the English equivalent, which were to pick fish names that have similar letters to “Mindhack”, and to use names that would be easy to recognize as fish names (and thus easy to recognize as a joke). Fortunately, I knew I was set the moment I saw “minnow” and “haddock” in a list of common fish names. The only other thing I considered was to have it be “minnow ‘n haddock” instead to make it shorter/closer to “Mindhack”, but I thought that might be harder to understand and a bit unnecessary.

 

隊長
「ここに集められているのは
FORMAT がスキャンした
筋金入りの悪人たち……」

Captain
“Kept here after being
scanned by FORMAT,
they’re the worst of the worst…”

「筋金入りの悪人たち」というセリフを翻訳するのはかなり難しかったです。最初に提出した翻訳では“incorrigible evildoers”と書いていました。“Incorrigible”が「筋金入りの・救いようのない」で、“evildoers”が「悪人たち」という意味です。決して間違いではありませんが、 隊長が言うには少し軟派というか飾っているというか… 最終的に提出したセリフは“the worst of the worst”「最悪中の最悪」というもので、シンプルかつインパクトがあるので採用しました。「筋金入りの」と「悪人たち」を別々に翻訳する必要はない、と気づいたときに思いつきました。また、「最悪中の最悪」と書きましたが“worst”という単語は幅広い意味を持つ便利な言葉なので、必ずしも倫理的な悪を指しておらず、嫌悪感などがないニュート ラルなところが気に入っています。「悪人たち」と「悪人ども」のニュアンスの違いみたいな感じです。隊長は罪を裁かないので…

In my first draft, I translated the phrase “筋金入りの悪人たち” as “incorrigible evildoers”. Which isn’t wrong, but the words felt a bit too pretentious to come from the captain. I was looking for something that had the same effect and impact, but with simpler words. The phrase finally came to me when I realized that I didn’t necessarily need to translate the words “筋金入りの”(incorrigible) and “悪人たち”(evildoers) separately. I also think that “the worst of the worst” is more appropriate in this case, as it has less of a moral implication; the captain isn’t here to judge any sins.

 


 

来週も岩﨑さんからのコメントをお届けいたします。お楽しみに!