重機のキララ

ひとりの男の魂を巡る、サイバーパンク残酷童話物語

 

始末屋キララは身体の八割を機械義肢に置換された、重機のような大男だ。彼は生身の身体に戻る日を夢見ている。五感を失い、脳に埋め込まれた戦闘AIに勝手に体を動かされ、気に食わないことばかり強いられるろくでもない日々。
ある日キララは、自分の夢を叶える方法を見つける……

*この作品には軽微な残酷描写、非人道的描写、『つらくてしんどい』描写が含まれます。
*この作品には非人道的な行いを推奨する意図は一切ありません。
*作品に登場する人物・団体・地名などはフィクションであり、実在のものとは一切関係ありません。

  • ep01,酷い趣味のAI

    男は背中からアスファルトに叩きつけられた。強化骨格の背骨が折れる音がした。

  • ep02,空の器

    トラックの助手席に座った男は、あくびを噛み殺しながら、自分が何秒間瞬きせずにいられるか数えていた。

  • ep03,奉仕のかたち

    ボックス席の脇のレールを走る皿。その上に乗った小さな寿司。流れては去っていく皿を、顔を近づけて追いかける金色の目。住宅地郊外の大通り脇の回転寿司。24時間営業のチェーン店だ。深夜と早朝の境目の時間、カウンターの他にファミリー向けのボックス席…

  • ep04-A,その場凌ぎ

    「アキヒサくん、久しぶり」あどけない顔の少女がこちらを覗き込み、千切れんばかりに両手を振っている。歳は8歳だか、9歳だったか。艶やかな黒髪を三つ編みにして、両肩に長く吊り下げている。鼻にかかって甘えるような、舌足らずの話し方。「元気にしてた…

  • ep04-B,防御反応

    ヒシダ第一コーポラス・一階防災センター。「なんだあ」壁一面の監視モニタのひとつが赤く光り、警備員の男は気怠げに声を上げた。男は誰も見ていないのをいいことに、パイプ椅子を3つ並べてビーチサイドのサマーチェア状にしていた。だらしなく寝そべったま…

  • ep05,光

    キララはうつ伏せに横たわって、顔の目の前にある硬い金属の手を眺めた。未だにそれが自分のものだと気づくまでには、時間が必要だった。身体を起こすと、知らないうちに肩にかけられていた毛布がソファにずり落ちた。いつの間にか眠りこけてしまったらしい。…

  • ep06,嘘のつきかた

    スケアクロウはみんな死を恐れてる。だから人の命令を聞くんだ。キララは『弟』の言葉を反芻した。紫解Augmented Robotics、通称紫解A.R.の研究施設は、丁寧に刈りそろえられた緑の芝の真ん中に浮かぶ、真っ白な陸の島だった。まとわり…

  • ep07-A,心変わり

    「このままあいつに会いたくない」身体中に透明な血がこびりついて、見えない錆と染みに塗れている気がする。そう呟いたキララに答えて、オキザリスは自動無人洗車機をサジェストした。研究所を出て、地平線が見える程拓けた道路を辿って歩いていくと、持て余…

  • ep07-B,願望

    打ち付けられたドアから、水飛沫が飛び散った。午前三時過ぎのアパートの外廊下を、鈍重な鋼が打ち鳴らす。キララは抗おうとしたが、AIは迷いなく鉄の身体をすたすたと歩かせた。明かりが消えたままの二階の角部屋が背中に遠ざかっていく。「おい」苛立ちよ…

  • ep08,兄と弟

    東から淡く昇りかけた陽が、ヒシダの駅前に乗り捨てたスケアクロウ用バイクの流線を瞬かせた。バイクで移動できる範囲内でセントラルラインに接続しているのは、ヒシダ駅だけだった。始発が動き始める時刻のせいか、いつに増して人影はない。二人は駅の外壁に…

  • ep09,勇気

    雨が降っていた。夜のシンジュク駅前を往来するPVC傘の流れは、街中に瞬くシアンとマゼンタをあちこちに転写し、その下に透ける人々の顔はただ影でしかなかった。キララの大柄な姿は透明なビニールの水面から頭ひとつ出て、ようやく足のつく浅瀬の波をかき…

  • ep10,訣別

    『全権委任』。他に言葉は要らなかった。オキザリスはキララの手を取った。目の前を飛び去っていくままだった外壁へ、重機の指が爪を立てた。不時着する飛行機のように激しく振動しながら、オキザリスは墜落を止めようと試みた。雨の中に煌々と火花が散り、指…

(続きは執筆中)


 

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