コラム : オリジナルのすきまトークを作ろう!(前編)

こんばんは! MINDHACKチーム広報&サブシナリオ担当のササン三です。

『MINDHACK』を楽しんでくださっている方のなかには、自分の創作作品がある方もいらっしゃると思います。なかでも「キャラクターを作るのが好き!」という方は多いかもしれませんね。そういう場合、次のような悩みが少なくないのではないでしょうか。「キャラクターはたくさんいるのに、本編がない……」

頭の中では常にキャラクターが動き回っていて描きたいシーンもたくさんあるのに、いざ漫画や小説を作ろうとすると手が止まってしまう。なぜなら、「キャラクターを動かす」ことと「シナリオを組み立てる」ことは似ているようで別の作業だからです。例えるなら、台詞や会話を考えるのはパズルのピースを作ること。1本の脚本に仕上げるのはピースを組み合わせて大きな1枚絵を描き出すことに似ているかもしれません。

かくいう私も「パズルのピースしか作れない」タイプの人間で、長編作品を作れないことにコンプレックスを感じていました。そこで、今では次のように考えています。

パズルのピースしか作れなくても、ピースだけ額縁に入れてしまえばよくない!?

ということで、今回はピース……すなわち「キャラクターのやりとり」だけを作品化することを目指します。勘のいい方はお気づきかもしれませんね。簡単に言うと「自分だけのすきまトークを作ろう!」ということです。本家MINDHACKのすきまトークは、実際には3人で作っているため複雑な工程を経てシナリオを決定しているのですが、今回は1人だけで短い漫才動画を作ることを目指してみます。

 

今回の記事は、次のような方に向けて書いています。

-シナリオを書くのは苦手!
キャラクターの関係性だけはしっかり決まっている!
-「シナリオの書き方」みたいな本を読んでみたけど、よく分からなかった! あるいは分かったけどできない!
理論より直観派!!

上記から察していただけると思いますが、理論的なことは何もお伝えできないのでご理解いただけますと幸いです。

 

1.キャラクターの準備

今回は「キャラクターを動かすのが好き」という前提に立っているので、すでに登場人物は決まっているものとします(キャラクター自体の作り方は、またいずれ……)。例として今回はササン三の創作キャラクターに登場してもらいましょう。

とある無人島の灯台で暮らしているふたり組。

 

パラチャ
明るく前向きな釣り針のひと。マイペースで好奇心旺盛。ずっと灯台の家で読書をして暮らしてきた。

ベリリゥ:
ひねくれて不器用な錨(いかり)のひと。船で働いていたが、難破してパラチャに助けられた。しっかり者だけどパラチャに甘い。

 

今回は例としての分かりやすさをとって対照的な「でこぼこコンビ」を選んでみました。実際にそのほうが漫才を書きやすいかと思いますが、「創作キャラクターにお気楽天然野郎しかいない!」という方はお気楽天然野郎だけ出してもよいと思います。シナリオに合わせてキャラクターを捻じ曲げるのは厳禁です。そういうやり方もありますが、今回はそれができない方に向けての書き方をやっていきましょう。

 

2.とにかく書き始めてみる

 

さて、役者が揃ったところでいよいよ漫才を書いていきます。やりたいシーンが決まっている場合はいいのですが、いざ本番を書こうとすると手が止まってしまうことってありますよね。そういう場合、どうするか。とりあえずこうしましょう。

 

「大変だー!」

 

「大変だー」。とりあえずこう書いておけば何か始まります。この時点で何が大変なのかまったく決まっていなくても大丈夫です。私も何が大変なのか分かりません。

で、この「大変だー」、誰が言ったのかすら決まっていません。さて、この台詞は誰のものなのか。先ほどの登場人物を振り返ってみましょう。活発なパラチャとへんくつなベリリゥ。順当に考えれば、トラブルメーカーになりそうなのはパラチャですね。

皆さんも自分のキャラクターを見比べて、どちらがより「大変だー」と言いそうか考えてみてください。「こいつが大変なことをしたら、あいつが後始末をして、説教が始まって……」と、先の展開がうっすら見えてワクワクする方が正解です(もちろん慣れてきたらあえて逆にハズすのもOK)。

というわけで今回はパラチャがボケ・ベリリゥがツッコミになるだろうと見当を付けつつ、先ほどのテキストを次のように書き換えてみましょう。

 

パラチャ
「大変だー!」

 

おめでとうございます。漫才の一歩目を踏み出しました。何も決まっていなくてさぞ不安かと思いますが、何とかなります。この調子で続きを書いていきましょう。

さて、パラチャ(あるいは、あなたのキャラクター)がこんな呼びかけをしてきたら、相方はなんと答えるでしょうか。ベリリゥはひねくれているので「うるさいな」と邪険に扱うかもしれませんし、なんだかんだ甘いので「どうしたんだ」と様子を聞いてくれるかもしれません。いろいろな可能性がありますが、今回は話を次へ進める必要性があるので様子を聞きつつ、嫌味を交えることでキャラクターらしさを出してみましょう。

パラチャ
「大変だー!」

ベリリゥ
「何だ、また厄介事を持ち込んできたのか」

 

こんな感じで、「話を進めるための台詞+そのキャラクターらしい一言」を組み合わせるのは常套手段なので、覚えておくといいかもしれません。

さて、次の一言でいよいよパラチャが「大変だ」の中身を答えます。逃げ続けてきた問題に向き合うときがきました。一体何が大変だというのか。なんだかんだ、私が漫才を書くときはいつもここでつまずきます。

このとき、2つのアプローチがあります。1つは、キャラクターの日常風景から話を膨らませる方法。たとえばパラチャとベリリゥは孤島の灯台で暮らしているので、海や浜辺、釣りの話などが挙がってくるかもしれません。とっつきやすいのはこちらの手法ですね。

もう1つのアプローチは、あなた自身から引き出すことです。たとえば今、どんなものが目につくでしょうか。もし外が夕立だったら、雨の話題をふたりにさせてみるといいかもしれません。デスクの上に積んでる本が目に入ったら、読書の話をさせるのがいいでしょう。漫才の回数を重ねると、こちらの方がランダムにトピックを拾える分だけ打率が高くなる気がします。

と、私はここで、デスクのうえに置いてあるシーラカンスの置物が目に入りました。

これ。

 

じゃあシーラカンスの話にしよう。片方は釣り針のひとだし、魚とは相性がいいでしょう。さっそく先ほどまでのシナリオに書き加えます。

 

パラチャ
「大変だー!」

ベリリゥ
「何だ、また厄介事を持ち込んできたのか」

パラチャ
「シーラカンス!」

ベリリゥ
「は?」

パラチャ
「シーラカンスが釣れちゃったんだよ!!」

 

一気に3台詞分書いてみました。一言で「シーラカンスが釣れたよ!」と伝えてしまってもいいのですが、おそらくシーラカンスが釣れたのは大変なことなので動揺を伝えるためにまどろっこしいやりとりにしてみました。このあたりのさじ加減を言語化してお伝えするのは難しいのですが、情報を1つ伝えるだけでもキャラクターにどんな言い方をさせたら「らしさ」が出るか考えるといいかもしれません。

では、シーラカンスのことを伝え聞いたベリリゥはどんな反応をするでしょうか。素直に「えーっ、それはすごい!」と驚くようなタイプではなさそうですね。「馬鹿なこというな、そんなわけないだろ」とツッコミを入れてたしなめるかもしれません……が、ここで重要なことに気が付きました。ベリリゥはそもそもシーラカンスについて知っているだろうか?

パラチャは本の虫なので知識がありますが、ベリリゥはずっと船(※漁船ではない)で力仕事をしてきたひとです。古代生物のことを聞いても、もしかするとピンとこないのではないだろうか。そうなってくると話が変わってきます。シーラカンスに驚くパラチャと、ピンときていないベリリゥというズレから物語が発展してきそうですね。なんか見えてきましたよ! おそらく初めに設定したボケとツッコミも逆転するでしょう。こんな風に。

パラチャ
「大変だー!」

ベリリゥ
「何だ、また厄介事を持ち込んできたのか」

パラチャ
「シーラカンス!」

ベリリゥ
「は?」

パラチャ
「シーラカンスが釣れちゃったんだよ!!」

ベリリゥ
「はあ……それが今夜の晩飯か?」

パラチャ
「なに!? 何言ってるの!?」

パラチャ
「君、シーラカンスを食べようとしてるのかい!?」

ベリリゥ
「釣ったならそういうもんだろう」

パラチャ
「そうじゃなくて! シーラカンスってめちゃくちゃ学術的に貴重なサカナなんだよっ!」

 

かなり話が進みましたね! 一気に飛ばしてしまいましたが、「ベリリゥはボケかもしれない」という気づきから、ベリリゥにトンチンカンなことを言わせたのがポイントです。さて、すきまトークであればざっくり500字で1分弱の動画になります。上記のやりとりを数えると……212文字。あれ!? 全然足りねえ!! でもやりとり10往復ちょっとくらいでオチをつけるのがダレずに綺麗にまとまる気がします。ちょっと短いですがそろそろオチをつけましょう。

つけましょうと言いましたが、それが一番難しいんだよなあ。愚直にさっき言った台詞から考えましょう。パラチャからシーラカンスの学術的な価値を説かれるベリリゥですが、どんな反応をするでしょう。多分、やっぱり価値をよく分かってないんじゃないでしょうか。絶対全然分かってない! あっ、なんかこのフレーズいいですね。オチに使いましょう。

パラチャ
「大変だー!」

ベリリゥ
「何だ、また厄介事を持ち込んできたのか」

パラチャ
「シーラカンス!」

ベリリゥ
「は?」

パラチャ
「シーラカンスが釣れちゃったんだよ!!」

ベリリゥ
「はあ……それが今夜の晩飯か?」

パラチャ
「なに!? 何言ってるの!?」

パラチャ
「君、シーラカンスを食べようとしてるのかい!?」

ベリリゥ
「釣ったならそういうもんだろう」

パラチャ
「そうじゃなくて! シーラカンスってめちゃくちゃ学術的に貴重なサカナなんだよっ!」

~~~~~

パラチャ
「絶対全然分かってない!」

 

途中の台詞が飛びましたが、先に「分かってない」というオチのフレーズが決まってしまいました。それでは、ここに繋がるためのもう1,2台詞を考えてみましょう。「分かってないじゃん!」というオチに繋げるためには、「分かりましたか?」「はい、分かりました。~ですね」というやり取りが必要になりそうです。そこを埋めていきましょう。

 

パラチャ
「大変だー!」

ベリリゥ
「何だ、また厄介事を持ち込んできたのか」

パラチャ
「シーラカンス!」

ベリリゥ
「は?」

パラチャ
「シーラカンスが釣れちゃったんだよ!!」

ベリリゥ
「はあ……それが今夜の晩飯か?」

パラチャ
「なに!? 何言ってるの!?」

パラチャ
「君、シーラカンスを食べようとしてるのかい!?」

ベリリゥ
「釣ったならそういうもんだろう」

パラチャ
「そうじゃなくて! シーラカンスってめちゃくちゃ学術的に貴重なサカナなんだよっ!」

パラチャ
「ベリリゥ、ちゃんと価値分かって言ってる!?」

ベリリゥ
「ああ、珍しいサカナなのか……分かった。だったら、ムニエルよりサシミだな」

パラチャ
「絶対全然分かってない!」

 

価値が分かっていないとしたら、おそらく依然としてシーラカンスを食べようとするであろう。そんなわけで、上記のようなやりとりにしてみました。

これにて漫才が1本完成です! 今回の過程でお伝えしたかったのは、次のようなことです。まず、最初にまったく無計画でもいい! なんにもオチを決めずに「大変だ」だけ言わせても、何とかなります。なぜならキャラクターの設定や関係性が決まっていれば、何を言うか自ずと分かるから。「こいつならここでツッコミを入れるだろうな」とか、「この子はこんなときこう対処するだろうな」という反応を連鎖させていけば、300~500文字くらいの漫才は同じように書けるかと思います。

もちろん、このやりとりを長編に膨らませようとしたら別です。実はシーラカンスが釣れたことでこのあたりの海域の異常気象が明らかになり、世界の異変を救うために2人は冒険の旅へ……みたいな話を書こうとしたら、まったく別の技術がいるでしょう。え? 本当はそういうのが書きたいって?

 

あ!! そういう場合は、去年うちのシナリオライター紅狐が書いたこちらの記事をご覧ください! 今回の記事とは違って、理論的にシナリオを組み立てる技術が解説されていますよ!

 

でも今回の記事のテーマを思い出してください。「パズルのピースをピースのまま作品にすること」。せっかく漫才が書けたので、どうせならすきまトークのみたいにゲーム画面のような動画にしたいですよね。実際のすきまトークはMINDHACKのゲーム開発画面を応用して動画化しているので気軽に「真似してくださいね!」とは言いづらいのですが、今回の漫才はどうするべきか……

と、悩んでいたら、最適なツールを発見しました。誰が呼んだかその名も「ティラノビルダー」! 私も使ったことはないのですが、せっかくなので次のコラムではこのツールを使って動画を制作するレポートを書いてみたいと思います。みんなも作ろう! 漫才動画!