不眠症

〈不眠症とは〉

私は語る。

「うん」

彼は応答する。

〈入眠や眠り続けることができない睡眠障害〉
「うん」
〈大まかに医学的な原因を持つものと、そうでないものに二分され〉
「ああ」
〈身体疾患、精神障害、薬物の使用等が原因になりうる〉
「腹減ったなぁ」

私は前方を見る。

一面の荒地、一面の荒地、一面の荒地。

赤茶けた砂と剥き出しの岩の海が見渡す限り永久とも感じられるように続き、時折その合間から覗く折れて錆びた鉄塔の姿は、沈んだ大型客船の残骸が波間に漂うのを思わせる。砂埃に紛れて霞む視界の範囲の向こうにも、おそらく延々と同じ光景が続いている。

私はかつての世界の航空写真と今の座標を重ね合わせる。ここは、災厄の日以前は郊外の穏やかな街であったらしい。あの鉄塔は発電施設の名残だが、今は見る影もない。

私は後方を見る。

人類がかつて火星の探査機に撮影させた写真を思い出す。そう、あれにそっくりだ。実際ここが火星であれば良かったのに、と今この地を進む私は思う。初めからこういう景色なら何の異議もない。

私は自分の横を歩く主人を見る。

〈睡眠の問題を抱える人間にはしばしば睡眠薬が用いられ〉

アレックスは応答する。応答する言葉にはときどき不明瞭で解読不能なものが混ざる。

〈適正な使用は好ましい結果をもたらすものの〉

方向スティックの壊れて傾いたコントローラに操られるように、ただただ足だけが前進という純粋な運動を繰り返している。何しろ五日近く何も飲まず食わずの状態で、最後に食べたのだって、廃屋から運良く転がり出てきた小さな缶詰がひとつだ。魔物とは久しく遭遇していない。

〈定期、長期的に用いた場合、依存症や乱用に繋がる恐れもあり〉

私はアレックスの顔を見上げる。口元を見る。笑っている。歯を見せて口角の上がった鋭い笑み。そして涎。

私は言語的に表現し難い衝動を感じ、内臓辞書の読み上げを中断する。

〈………ほんとにゾンビみたいな顔してますよ〉
「それって食えるかな」

彼は笑う。

「大丈夫だって!食える食える!わかってるって!」

 

この緩やかな擂鉢状の荒野に立ち入ってから、もう三日近くが経過している。

三日前、私たちはクレーターの内周にあるという街を探してこの地へ辿り着いた。街は確かにあったが、何らかの邪悪な力に蹂躙されて跡形もなく消し去られた後だった。それが資源を求めて人々を襲う野盗の軍勢のせいだったのか、群れを成した魔物達のせいだったのかはもはや知る由も無い。

私は来た道を引き返して外周を通る道を勧めたが、その時点で既に概ねこんな様子だった彼は何かに呼ばれたように確固たる足取りで、クレーターのど真ん中を真っ直ぐ目指して歩き出した。私にはそのハーメルンの笛吹きの物語を想起させる迷いなき歩みは止められなかったので、そのままその方角に歩き続けている。

〈不眠症の原因は、肉体の痛み、周囲の騒音など外的な要因から〉

私は詩でも唄い上げるように、延々と辞書を読み上げる。

こうなる前の彼自身から、廃屋で缶詰の底を舐めながらそう頼まれたのだ。とにかく何でもいいからなんか喋っててくれ、返事してれば気が紛れるから、と。効果のほどは定かではないが、私自身もとりあえずはそれで自分という存在の意義を見失わずに落ち着いている。こんな景色続きでは高性能ナビゲータもへったくれもない。

〈ストレス、生活リズムの乱れ、不安、PTSDなど内的な要因まで様々で………あ〉

私は思わず音声を停止する。数日ぶりに荒地と砂と錆びた鉄塔以外のものが視界へ映ったからだ。砂の霞の向こうで、まったく唐突に、横転したトラックが砂塵に埋もれていた。

 

〈タイヤの跡がわずかに残っています。この状態になってから、少なくとも一ヶ月は経過しているようです〉

あてもなく直進していた間に比べれば、視界の奥のトラックを目指して歩く距離は非常に短いものだった。

運転席まで含めて全長八メートルほどの、かつての世界で引っ越し業者が使っていたような、アルミの四角い荷台がついた四トントラック。場所に反して状態はそれほど悪くはない。傷だらけだが、最近まで人が整備していた跡がある。おそらくキャラバンのものだろう。私は無残に横倒しになった車体の脇に移動し、周囲の状態を分析する。

〈残念ながら積荷に食料はないようですが、方角的にはあの失われた街を目指していたものと推測できます。このトラックが来た道を辿れば、あるいは人里にたどり着けるかも〉

希望的観測を伝えるべく振り返ると、アレックスは運転席だった部分の上によじ登り立っていた。横倒しのトラック、地面からの高さは二・五メートル。

空に面してしまった車体のドアをがちゃがちゃと引いたり押したり試みるが、鍵がかかっているせいか、ドア自体がひしゃげてしまっているせいか、そこが開く気配はない。左右とフロントの窓は遮光仕様の強化ガラス。外側からも補強用の鉄板が何重にも貼り付けられており、中の様子は目視では確認できなかった。

〈そこを開けたいんですか?衛星砲で破壊………〉

と提案してから、私は先刻のクロワッサンをひっくり返したような笑顔を思い出して〈今の、なし〉と取り消した。開かない運転席に入っているものといえば、当然運転手の干物に決まっている。彼が何を食べようと勝手だが、直接的な幇助はシステム上できない。

元より人の話を聞いていないアレックスは運転席から飛び降りると、荷台の後方へ回った。荷台の側面には、何か強い力で貫かれたような丸く大きな穴が穿たれていた。その隙間から内側に身を滑りこませると、目の前には水を運搬するための金属製のタンクが鎮座している。あとのスペースにはコンテナに収められた銃と弾、斧、スコップ、それから金属の破片を磨いて鉄パイプに縛り付けた原始的な槍、その他諸々様々な武器、武装がめちゃくちゃに混ざり合って散乱している。

アレックスは地面に散らばった刃物を漁りながら辺りをきょろきょろと見回していたが、やがてその中から一本の小振りの手斧を手に取ると、水のタンクに向けて振りかぶった。カーン、と響く軽い金属音。よく見るとその脇腹にもトラックの側面と似た大穴が空いていて、中身はすっかり蒸発してしまっていた。

切れ味を確かめたアレックスはタンクから斧を引き抜くと、荷台の外に出た。

〈それ、防災用の手斧ですね。いい選択ではあります〉
「食えるかな」
〈フォークには不適切と思いますけどね〉

斧を片手にトラックを見上げる彼の脇で、私はタイヤ痕がどこまで検知できるかを算出している。

「食えるよな」
〈まあ、アナタがそうしたいならご自由にどうぞ〉

ふと、私も彼の視線の先にメインカメラを向ける。何かが動いている。トラックの荷台の上の景色が、陽炎のようにゆらゆらと揺れている。

〈………〉

不意にその中心に鮮やかな橙色の穴が開き、そこから肉色のなにか紐のついた塊が猛烈な速度でこちらに発射されるのを認識するまで、一秒もなかった。私が防御態勢に入るのと、アレックスがその場から真横に飛び退いて避けるのはほとんど同時だった。

私は蛍光黄緑のナビゲートウインドウを特殊な方式で帯電させてバリア化し、軸を中心に隙間なく張り巡らせた。その間に、四トントラックの荷台の上には巨大な大型の爬虫類が姿を現していた。光学迷彩のように周囲の風景を映しこんでいた体色が、輪郭の縁からじわじわと、口の中と同じような本来の極彩色に変化していく。見た目はカメレオンに近いが、私の知るカメレオンは体長が六メートルもあったりしないし、ステルス機能もない。

〈魔物!〉
「食えるな!」

額の大きな角を挟んで巨大な眼球が二つ、ぐるりと回ってアレックスを追う。荷台の凹凸を蹴ってトラックの上に駆け上がる彼の背後を、再び放たれた舌の質量が掠める。ジェット機が通り過ぎたような風圧が押し寄せ、砂が激しく捲き上る。舌が口の中に戻る隙をついて、彼の姿は既に魔物の背の上、首元にある。

天高く両手で斧を掲げると、アレックスは何か鬨の声のようなものを上げながら獲物の頚椎にそれを振り下ろした。深く突き刺さる斧の柄を逆手に握り直して、彼はそのままトラックの全長と同じ頭から背骨の終わりに向かって短距離疾走。魔物の背中は怪獣の着ぐるみのジッパーのように一直線に引き裂かれて、赤とも紫とも表し難い色合いの体液が激しく噴出し、周囲の湿度が急激に上がる。細かな飛沫が私のウインドウに当たって、電撃殺虫器に似たばちばちという音が鳴る。私は手頃な岩の陰に身を隠す。全身に血飛沫を被ったアレックスは手を滑らせて斧を離し、この光景に歓声を上げながらトラックから飛び降りる。

魔物はトラックの上で激しく首を振り向けて威嚇の声を上げながら、根元に斧が刺さったままの長い尾をしならせて振りかぶる。砂に埋まったタイヤの横を転がるアレックスは鞭のような一撃を躱して、太腿のホルスターからナイフを片手に抜くと、上方の魔物の目に向かって投擲。光に煌めく鋭い金属。巨大な瞼が眼球を覆って黒目への刺突を避ける。瞬きの暗転の合間に斧を引き抜く彼の視界では荷台の側面に標的を外した長い尾がめり込んでいる。四番バッターのフルスイングに似た一閃。再び激しく飛沫が舞う。切断し損ねた尾が明後日の方向へ跳ね上がり、刺さったままの斧の柄を手綱のように握ってアレックスは再びトラックの上へ。刃が抜ける。魔物は咆哮を上げて悶え、尾ごと荷台から這いずり落ちる。

地面にひっくり返った獲物を見下ろすアレックスは右手に斧を握り直すと、左手でその刃先に付着した有機的液体を取り払いながら唇を舐め、ついでに左の指先も舐める。服のあちこちから妙な赤色の水滴が滴り、その口元はとびきりのスマイルで、とうとう耐えきれずに声を上げて笑い出す。

「あっはっは! 飯だ! 飯! はははっ!」
〈B級ホラー映画〉

私はひとり岩陰で、率直な感想を呟く。

しかし、砂地に仰向けでのたうつ巨大な極彩色がにわかに震えだす。背中に開いたジッパーの中から、流れ出す液体以外に何か固形の有機物が覗いている。突然激しく仰け反ると、この巨大カメレオンの背中の傷からは六本の立派なトカゲ脚が突き出て、そのまま天地を逆さにした状態になり立ち上がった。尾に刻んだ傷跡からもY字路のような状態で余計に脚が一本、収まりが悪そうに飛び出している。

〈あっちは出来の悪いモンスター映画ですかね。もう少し、CGを頑張ってもらわないと〉

上下逆の頭が持ち上がり、爬虫類の目玉が獲物を凝視する。直後、凄まじい速度で長い舌が発射され、荷台の縁を直撃。トラック全体が一瞬斜めに宙に浮き上がり、間一髪躱したアレックスは咄嗟に片膝をついて自分の足元にしがみつく。舌の通り過ぎた後には荷台だった鉄板の欠片すら残らず、見事な丸い穴が空いている。

六本の脚が器用に交差して地面の砂を蹴り、ムカデが這うような滑らかな足取りで魔物は再び荷台を登る。その体重でトラックは先ほどとは逆方向に傾き、アレックスは滑り落ちる前に、新たに穿たれた穴から荷台の中に飛び込んだ。魔物はそれを追って頭を突っ込む。六本の生えたての脚が足場をそれぞれ強く踏みしめ、鉄板がぎりぎりと歪む。もともとあった四本の正しい方向の脚は、元は腹だった背中の横で見えない床を走るように空中でぐるぐると踊っている。半ばで歪に枝分かれした長い尾がしなり、トラックは上に乗せたものの重みで左右に激しく傾く。その様子はさながら荒波に揉まれる小舟のよう。

私はカメレオンの足踏みと重みでぎしぎしと徐々に潰れていくトラックを傍観している。何度かどぉん、どぉんと大砲に似たくぐもった重低音が荷台の中で轟き、その度にトラック全体がはじかれたように砂に跡をつけて移動する。おそらく首を突っ込んだまま舌を伸ばそうと試みたのだろう。

突如、地獄の幌を勢いよく引き裂くような鋭く不快な音が響く。荷台の穴に突っ込まれていた魔物の首が激しく仰け反り、外の世界を仰ぐ。片方の目玉がない。口からは舌がはみ出して垂れ下がり、抉られた眼窩からはどろりとした体液が泉のように溢れ、その画を認識する間も僅かに、宙を泳いでいた四つの脚の中心、つまり元々腹だった部位から金属片が鋭く飛び出す。あの切先はこのトラックが運んでいた槍だ。一本、二本、三、四、五六七八、腹から首から脚の付け根から槍の穂先に貫かれ、魔物はもう昆虫の標本あるいはピンクッションを想起させる状態になって、身動きを許されない。  先ほどまで魔物が首を突っ込んでいた穴の縁に内側から手がかかる。全身真っ赤に染まったアレックスが口に手斧の柄を咥え、腰へ無理矢理に様々な刃物長物をくくりつけ、悠々と荷台の上に姿を表した。

最終的に十三本の槍ででたらめに鉄板に縫い付けられてもがく片目のないカメレオン。頭の脇に、ありとあらゆる解体道具、この場における最適なフォークとナイフが並べられていく。びくびくと痙攣する魔物の頭の前に立って、口の中に手を突っ込む。腱を切られてバネをなくした舌はだらしなく引き伸ばされ、先端をブーツで踏むと柔らかい肉が底に食い込む。捕食者はにっこり笑う。

アレックスは手斧を高く掲げる。打ち付ける、掲げる、打ち付ける、舌が切れる、掲げる、打ち付ける、掲げる、打ち付ける、残っていたほうの目玉が捥げる、傾いた荷台を転げ落ちる、掲げる、振り下ろす、血飛沫が飛ぶ、掲げる、振り下ろす、落ちかけた夕陽に照らされて、その顔は希望と期待と食欲にぎらぎらと輝いている………

〈全く、不眠症になりそうですよ〉

私は延々と続く食肉解体ショーから、タイヤ痕の分析を続けるべくカメラを背けた。

 

 

 

衛星からの航空写真を撮影、補正・解析して、彼が最後に残った尻尾の先を齧り始めるまでには、クレーターにはすっかり夜が訪れていた。

荷台の縁に腰掛け、すっかり切れ端だけになった獲物をナイフで削っては口に運ぶアレックスの表情には、もう笑顔はなかった。

「見えないだけで、もっとたくさん隠れてんのかな」

外した遮光ゴーグルを首にかけて、砂塵にまみれて星ひとつ見えない夜の闇に目を細めて凝らしながら、もぐもぐと肉を噛む。

「うまかったなあ、トカゲ……」
〈何を不満そうな顔してるんですか?〉
「いや、食い終わっちゃうな、と思ってさ……」

先の喧騒で潰れて斜面になった鉄板を辿って、私が側に行くと、彼は光るウインドウを一瞥した後目を背けた。

「まぶし」
〈失礼。『おやすみモード』にしましょうか〉
「何だそれ」
〈夜間のブルーライトは安眠の妨げになるので、光量を抑える機能がついてます。ほら、こんな感じ〉

私は機能をオンにする。蛍光グリーンのナビゲートウインドウが、黄味がかって目に優しげな、ぼんやりとした光にゆっくりと変わる。

「そっちの方がいいけどさ、寝るなら消しゃいいのに」
〈眠りたくとも眠れない人のための機能です。人間にも色々都合があるんですよ〉
「ふーん……」

結局私とは反対側を向いて咀嚼を続けることにした彼は、自分の脇によけておいた、獲物の食べられない部位に目を向けた。

鋼のように硬い骨と爪、歯、極彩色の皮の一部、それから貴金属や布など魔物が消化しきれなかった無機物の一部。半分溶けかけながらもまだ時を刻み続けている頑丈な腕時計や、狩人がよくつけている防塵バラクラバだったらしきものの金具、複数の銃弾に、アサルトライフルの先端部分など、カメレオンの胃袋からは私の分析で約三人分相当の遺品が見つかっていた。

獲物の最後の切れ端を無理やり口の中に突っ込むと、アレックスは肉の解体に使った手斧を手にとって立ち上がり、まだ閉ざされたままのトラックの運転席の上に足をかけた。そして斧を高く掲げて、窓の蝶番に向かって振り下ろす。掲げる、振り下ろす。

〈えっ? おやつタイムですか? 魔物は食べ飽きました?〉

私が尋ねると、口いっぱいに頬張った尻尾の先をはみ出させながら激しく首を横に降る。もごもごと何か主張する言葉が聞き取れなかったので、私はそのまま見ていることにした。

手斧でこじ開けるうちに開かずの鉄の缶詰の蓋が外れ、中に身体を滑り込ませたアレックスは、案の定干物になっていた運転手のからからに乾いた亡骸を引きずり出す。ミイラを砂の地面に置くと、今度は荷台の中からスコップを担いできて、トラックの脇を掘り始めた。

〈なるほど〉

彼の意図する所を把握した私は、比較的深く掘りやすそうな地面を照らして指し示し、墓掘りに協力する。幸い地面は砂よりいくらか固く、そうそう時間はかからなかった。

そうして名も知らぬ人々の残骸をすっかり埋めた砂の上へ、アレックスは墓標の代わりに手斧の刃を下へ向け、ざっくりと突き刺した。

「あのまま放っておくよりはマシだろ。こういうの、何て言うのかよくわかんねーけど」
〈REST IN PEACE〉
「うん?」
〈墓石に書く常套句。安らかに眠れ、という意味です。R・I・P〉

この場合、RはRUSTの方が相応しいかも。安らかに錆びよ、という言葉遊びが私の内臓辞書をよぎる。得体の知れない血飛沫を散々に浴びた手斧の刃は、このまま砂に埋もれて人知れず錆つき、あの火星の風景に似た赤い岩と同じ色に染まっていくだろう。このトラックも、トラックの中の水の器も、失われた街に辿り着くべきだったであろう無数の武器たちも。あちこちに突き出した折れた鉄塔と同じように。

「気の利いた冗談だな」アレックスは笑う。「俺の分までよく寝てくれよ」

私は彼の横顔を見る。血と砂で汚れきり、墓の中が相応しい程青ざめているとはいえ、今はこうして見上げているとごくごく普通の青年に見える。

彼は両手をはたいて砂を払うと、私に尋ねた。

「で、次の人里はどっちだって?」

〈タイヤの跡は北西へ続いています。迂回して翌々日にはこのクレーターから出られるはずです。アナタが正気で私の道案内を聞けば、の話ですが〉
「聞く聞く、あとできれば道中三食飯つきで……」
〈そこは保証できませんけど、気の紛らわしに何か喋っててあげてもいいですよ〉
「じゃあそれ頼む」
〈結構。何の話が良いですか?〉

夜の闇の道なき道へ、眠らない私たちは墓を背に歩き出す。

 

 

 

—「不眠症」(2018/5/23/23:00 日本時間)『ウィキペディア日本語版』より概要を引用  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E7%9C%A0%E7%97%87